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指紋の民族差と遺伝

人類学的、遺伝学的研究にも指紋はかなり応用されている。民族によって各紋様の出現率に差があり、大きく分けて、東洋系や南洋系には渦状紋が多く、ヨーロッパ系には弓状紋や蹄状紋が多いといわれている。この民族特有の分布は、2種類の紋様の比をとることによって表すことができる。まず弓状紋をA、甲種蹄状紋をR、乙種蹄状紋をUとし(RとUの区別は古畑種基(ふるはたたねもと)による。ゴールトンは両者を区別せずL)、渦状紋をWとした場合、古畑指数はW/R+U、ゴールトン指数はA/L、ダンクマイヤーDankmeijer指数はA/Wで表される。古畑指数によって各民族の紋様の傾向をみると、日本人=ほぼ80前後、中国人=100以上、イタリア人=60~70、アメリカ人=50前後、ドイツ人=45~50、イギリス人=35~60となる。なお、古畑指数によるとアイヌは50前後といわれ、指紋からみると欧米人に近い特徴を有する民族であることが認められる。
 指紋は胎生18週くらいでその原形がほぼ完成し、以後、発育に伴って隆線の太さ、間隔は大きくなっていくが、紋様の形状は変化せず、終生不変・万人不同といわれている。しかし、指紋は近親間での類似性が高く、その遺伝支配を証明する研究も数多く行われている。この点については親子・兄弟間の指紋を比較してみるだけでも、ある程度は納得がいくはずである。すなわち、弓状紋の多い両親からは弓状紋の多い子が、蹄状紋の多い両親からは蹄状紋の多い子が、そして渦状紋の多い両親からはやはり渦状紋の多い子ができ、また、双生児(とくに一卵性)の場合は、他の兄弟よりも紋様の類似性が高いということなどを念頭に置いてみるとよい。このような指紋の遺伝学的研究は1920年代以降になって盛んになったものである。たとえば、隆線数、指紋の幅や高さについて親子の遺伝関係を調査したもの(ボンヌビーK. Bonnevie、1924)、隆線の流れ方向について遺伝性を調べたもの(グリューネベルクH. Grneberg、1929)など、多数の報告が出されている。とくに松倉豊治は指紋の基本型として弓状紋(A)・蹄状紋(L)・渦状紋(W)、中間型として弓蹄紋(AL)・蹄渦紋(LW)・弓渦紋(AW)を考え、親子の世代を経るにしたがって簡単な構造から複雑な構造へ、またはその逆方向へと変異し、これらの指紋型には環状の移行関係(AALLWAWA)が成り立つものとみなした。そしてこの遺伝学的解析を容易にすべく、A=6、AL=12、L=18、LW=24、W=30、AW=0なる数値を与え、その10指分の合計値を生物学的指紋価と称し、これに基づいて親子間の遺伝関係を説明した(1952)。松倉はさらに、隆線数についても同様の遺伝関係を調べ、これも前者の法則と完全に一致することを証明した(隆線数の親子間遺伝法則)。かつては法医学の分野において、このような研究も親子鑑定などに応用されたが、DNA鑑定などが発達した現在では、その意義は低下している。
[古川理孝]


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関連項目かんれんこうもく

参考文献さんこうぶんけん音声映像資料おんせいえいぞうしりょう

  • ■岡田鎭著『指紋』(1958・長野市・令文社)
  • ■光末義著『指紋・その理論と実際』(1973・近代警察社)
  • ■上野正吉著『新法医学』(1977・南山堂)
  • ■藤原正一著『指紋』(1978・長野市・令文社)
  • ■松倉豊治編著『法医学』増補第2版(1979・永井書店)
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